思い出に残っているAVの話
あるシーンだけなぜかやたらと記憶に残っているAVがある。そこまでいやらしいシーンでない、行為の最中のことではないので読んでいってほしい。
それはもう10年近く前になんかのルートで友人から借りたDVDだったはず。
ジャンル的には女子高生(業界的には女子校生)ものだったと思う。私の性癖についてここで長々と語るのは事務所NGだし、読者NGも出そうなので置いておくが、特に高い熱量で手に入れたものではなかった。
惰性で、次これにするか、程度のものだった。
私の思い出のワンシーンは冒頭、どういった経緯か忘れたが中年男優と女子校生役の女優が狭い浴槽に向かい合って収まっている場面である。男は湯船に浸かっていない女の首あたりにお湯をかけながら「すげえ、はじく!」と言った。
なんでも若いとお湯を弾くということらしい。防水スプレーを施した生地に水分を垂らすことを想像してもらえればいい。それが弾くということだ。
次に男は自分の首から胸あたりにお湯を垂らして「だらー」と言った。「ほら」となぜか得意げに続けた。老化によって水を弾かなくなるということを証明したらしい。
おそらく今、パソコンのディスプレイやスマートフォンでこの文章を読んでいる人と同じ顔を女はしていたと思う。あなたと同じ顔を。
以降のやり取りは覚えていない。生まれて初めて父親の秘蔵のコレクションである大人のビデオをみたときに似たモヤモヤとした感想だけが残った。結果的には、まぁ、オナニーした。したけど、なんかスッキリしなかった。
水を弾く肌というのは若さの象徴みたいなものなのだろう。女子校生役なだけで実際は二十歳過ぎであろう女優に気を遣ったのか、そういった世界観を崩さないようアピールしたかったのか、単にお湯を垂らすのが好きな変態なのか、今となっては私にはわからない。
しかし、真意はどうあれ、この作品は私の胸のどこかに残り続けている。その結果だけ見れば男の狙いは的中かもしれないが、女優の顔も名前も体も覚えちゃいない。ただただ強烈な男とその行為だけが思い出される。
ふと入浴中思い出して、自分にお湯をかけて弾かれる水滴を見ながら、私はまだ若いのだと安心している。
将来自分の子供にお湯を垂らすまいと誓いながら。